新型コロナ患者にみられる脱毛症
〜確証バイアスの落とし穴〜
(参考文献:JAAD International誌オンライン版2022年2月22日号)

新型コロナ患者にみられる脱毛症では、①男性型脱毛症(AGA)、②休止期脱毛症(TE)、③円形脱毛症(AA)を区別して考えます。

米国🇺🇸の研究グループが、新型コロナ患者の脱毛症について書かれた41の原著論文で1,826例(平均年齢54.5歳、男性54.3%)を検討しています。

新型コロナと脱毛症のタイプの関連は次の通りでした。

【脱毛症のタイプ】
①男性型脱毛症(AGA)
②休止期脱毛症(TE)
③円形脱毛症(AA)

① 新型コロナ患者に男性型脱毛症(AGA)がみられた場合は、全員もともとAGAの人だった。

②新型コロナ患者に休止期脱毛症(TE)がみられた場合は、ほとんどが初めての経験で、新型コロナによって引き起こされたものだった。

③ 新型コロナ患者に円形脱毛症(AA)がみられた場合は、ほとんどが円形脱毛症になったことがある人だった。

この論文から得られる知見として、今まで脱毛症になったことがない人が、新型コロナ感染後に脱毛症で悩むケースでは、まず休止期脱毛症(TE)を考えるべきと言えます。

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休止期脱毛は身体的・精神的苦痛の数 ヶ月後にみられる一過性のものです。休止期脱毛は、発熱のある感染症・大きな外傷・出血・手術・急速なダイエット・出産などがきっかけで起こることが知られています。

休止期脱毛を理解するには、毛周期を知っておく必要があります。

毛髪は次のサイクルを繰り返しています。
⑴成長期:5~6年
⑵退行期:2~3週間
⑶休止期:3~4か月

成長期が終わると毛根が萎縮して休止期に入ります。それぞれの毛でサイクルが異なるため通常一斉に抜けることはありません。しかしながら、新型コロナ感染後の休止期脱毛では、成長期が急に止まり、一斉に休止期に入ってしまうのではないかと考えられています。新型コロナ感染2ヶ月後から始まり、およそ100日後まで続くことが多く、およそ半年くらいで徐々に毛髪が回復してくるケースが多いようです。

新型コロナ感染後の脱毛症のほとんどは、休止期脱毛と考えられます。休止期脱毛は、『一過性で半年後くらいで徐々に回復』します。

AGA治療を喧伝する自由診療クリニックで、新型コロナ感染後の脱毛症の治療成果を唄っているホームページも見受けられます。しかし、新型コロナ感染後の休止期脱毛に対するAGA治療の効果は不明です。休止期脱毛に対して、AGA治療で半年後に発毛があったのであれば、『AGA治療をしていなくても半年後に発毛していた可能性が高い』ということです。

新型コロナ後遺症全般にいえることですが、『回復には時間が必要』です。

確証バイアスは、仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のことを指します。人の不安に漬け込んで、医療知識に疎い人の確証バイアスを利用して、契約書にサインをさせているのであれば悪質な医療行為です。