帯状ほう疹は、水ぼうそうと同じ水痘・帯状ほう疹ウイルスにより発症します。水ぼうそうにかかったことがある人は、誰でも発症する可能性があります。
水ぼうそうは、5歳までに85%の人がかかり、多くの場合1週間程度で治癒します。しかし、その後も水痘・帯状ほう疹ウイルスは神経に数十年以上潜み、加齢・疲労・ストレスや病気などで免疫の働きが低下すると神経に沿って体の表面に現れ、帯状ほう疹を発症します。
帯状ほう疹を予防するためには、水ぼうそうのウイルスにある程度触れて『ブースター効果』を得たほうがよいことがわかっています。ブースター効果とは、体内で一度つくられた免疫が病原体に触れることで活性化することをいいます。
ところが、水ぼうそうワクチンの定期接種化により、水ぼうそうを発症する子どもは減少しています。それに伴い、ブースター効果を得る機会が減りました。近年、帯状ほう疹は、特に子育て世代の20〜40歳代の発症率が高くなっていますが、こうした理由によるものと考えられています。
しかしながら、水ぼうそうワクチンの定期接種は必要です。子どもの頃に発症する水ぼうそうは、まれに重症化し、成人で発症すると、脳炎・肺炎・肝炎などを併発することもあります。また、妊娠中に発症すると、胎児に影響が出る可能性があり、生まれた子どもに白内障や脳の萎縮などの合併症が現れることもあるからです。
帯状ほう疹は、50歳以上の人が全体の7割を占めています。高齢者に多い病気なので、高齢化が進むと発症率も上昇します。また、糖尿病などの生活習慣病のある人や、関節リウマチなどで免疫の働きを抑える薬を使っている患者さん、がんをわずらった患者さんは、免疫が低下しているため、帯状ほう疹を発症する可能性が高くなります。
帯状ほう疹は、50歳以上であればワクチン接種によって予防することができます。帯状ほう疹予防ワクチンには2種類あります。
生ワクチンは2016年に登場したもので、毒性を弱めたウイルスを体内に注入して、免疫の働きを高めるものです。発症を50%に抑えられ、たとえ発症しても軽症で済みます。 (※免疫抑制薬・抗リウマチ薬・抗がん剤などの薬を使っている人は、このワクチンの接種を受けられません。)
不活化ワクチンは、2020年に登場したものです。ウイルスをバラバラにして無毒化し、感染する能力を失わせたもので、免疫抑制薬・抗リウマチ薬・抗がん剤などの薬を使っている人でも接種を受けることができます。70歳以上でも90%以上の予防効果があります。
ただし、接種を受けた部位の腫れや痛みは8割ほど、疲労感や発熱などの副反応が6割くらいの人に起こります。